月別アーカイブ: 2008年6月

開業への道のり 4

 

今日から梅雨入りだそうです。梅雨が終われば夏ですね。

私はクーラージャンキーなので、家ではチャンネル争い

ならぬ設定温度争いが激しくなります。

少しはエコにしないといけませんね。。。

 

さて、出向病院とは現在勤務中の病院です。

当時常勤医は4人で1年間に約500のお産と200件強の

婦人科手術をしていました。もちろん非常勤の助けも

来てもらってはいましたので、原則は週に平日1回と

週末は月に2回程度の当直で済むはずです。

 

ところが、部長のユキオ先生は何事もみんなでやろう

という人で、とにかくほとんど毎日9時10時まで残ります。

陣痛が始まっている人がいれば生まれるまで残るから

です。いろんな経験をさせよう、ということだったのだと

思いますが、ホントに多くの経験をさせてもらいました。

 

ユキオ先生は一種変人で、ほとんど家に帰りません。

酔っ払って病院のロビーで寝ているなんてことは日常

茶飯事です。

しかしひとたびスイッチが入るとゴッドハンドがうなりを

あげ、なかなか生まれないと思った赤ちゃんがすーっと

生まれてくるのを何度も経験しました。

 

ある当直の日でした。夜中の12時くらいから分娩が一向に

すすまなくなり、促進剤を使っても生まれません。お母さんが

小さく、赤ちゃんはやや大きめでしたので微妙にきつかった

のです。しかも回旋異常と言って赤ちゃんの向きも反対でした。

でも赤ちゃんはだいぶ下がってきているし、心音はちょくちょく

下がるし、で、鉗子分娩を試みました。

 

鉗子をかけ、いざえいっと引っ張るとびくともしません。

もう一度試みるも、やはりびくともしません。鉗子で引っ張った

せいで赤ちゃんの心音はぐっと下がりました。

(これは参った、、、帝王切開かな)

と思ったのは午前3時。

(いやいや、ひょっとしてユキオ先生がいるかも)

と思い院内PHSをかけると

「んーーー、もしもし」

(これは神の声か??)

 

午前3時はユキオ先生のいつもの起床時間。

分娩室にあらわれた瞬間の安堵感は忘れられません。

一緒に鉗子を引っ張ってくれ、なんとかかんとかお産に

なりました。

 

お産に携わるなら、あるいは医療に携わるなら、

いざという時に備えていつでもスタンバイしている、

ということがとても大事なのだ、と私は理解しました。

 

長時間勤務は集中力を落とし医療ミスを招くから、

交代制で分業する、という考えが主流になってきて

います。しかし、病院にいながらきちんと休息をとって

いればいつでもいい体調でいられる、常に患者さんの

そばにいるということが重要なんだ、ということです。

 

「それなら、病院と家が一緒だったら家にいながら患者

さんのそばにいられるではないか!」

 

と思ったわけです。とすれば、自分の病院を作るしかない、

じゃあ開業だ、というわけです。

しかし、わが医局、わが母校は開業医になる人が少なく

どうしたらいいか、皆目見当がつかないのです。