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医師も横並び

 

読売新聞に医療改革の提言が出ていました。

 

安心医療にカネを惜しむな、とか、当たり前なんですが、

財源はきっと増税なんでしょうけど、増税するって話に

なると話がこじれて進まないんですよね。

 

でも、すぐにできそうなのは”若手医師の計画配置”。

日本では自分でなりたい科を選択できて、人並みに

我慢できれば専門医くらいには誰でもなれちゃいます。

 

それで診療科によって人的な余裕があまりに違って

きてしまっているから、診療科によって人数制限しよう

っていう話です。

 

そうすれば今人気のない、産婦人科医や小児科医の

確保につながるってわけだそうです。

人気のあるのは精神科とか眼科とか皮膚科。そういう

ところに応募してなれなかった人たちが産婦人科医に

なるってことです。

うーーーん、ということは、産婦人科医は落ちこぼれの

集団になるってことでしょうか。

 

なんかキビシイですけど、しょうがないですかね。

 

アメリカは、ってなんでもアメリカがいいみたいに言う

みたいで嫌ですけど、1年目からどんどん競争があって

優秀でないと他の診療科への転向を迫られるわけです。

“グレイズアナトミー”とか”ER”とかみたいなのは日常的。

 

日本ではそういうことがないだけに、勤務医はみんな

給料も横並び。いくら働いたって待遇はたいしてかわらない。

だから勤務医を辞めていく人が増えている。待遇が悪い

からじゃなくて、きちんとした評価システムがないからだと

思うんです。

 

そういう意味では競争社会にして活性化するのはいいこと

なんですけどね。

厚労省とか舛添さんなんか頑張ってくれないかなぁ、、、

 

ピンクリボン

 

ピンクリボンといえば、リボン運動の中でもいちばん

有名になったかもしれません。乳がん予防、治療の

運動です。

 

女性の診療科としては乳がんも守備範囲です。

ですが、大きな病院にいると、乳がんは外科の先生が

診断、治療をするので、婦人科としてはかかわることは

ほとんどありません。

 

しかし、クリニックでは子宮、卵巣、ついでに乳がん検診

までやっているところが多く、わがクリニックでも超音波

検査を主体にやっていく予定です。

 

というわけで、いまの病院では外科のタッチー先生と

一緒に半ば教わりながら診療に携わっております。

 

タッチー先生も乳腺を専門分野として普段から女性を

相手にしているせいか、物腰が柔らかくとても心地の

いい先生です。産婦人科医もだいたいそういう人種が

多く、普段女性と接しているとだんだん中性化されて

くるようです。

 

たまに怒鳴り散らす先生もいますけど、だいたいトラブル

が多いので淘汰されていくんでしょうね。

そうならないよう、いつも患者さん目線で、ですね。

 

お母さんへの支援

 

ジャイアンツが勝ってマジック2。気分が高ぶります。

 

それはそうと、クリニックはあくまで医療機関ですから

安全な医療、お産、手術を展開していくのは前提です。

でも、それだけではつまらない、というか地域に根差す

クリニックとしての役割は不十分だと考えています。

 

女性が自分の体をよく理解して、そのお手入れをして、

そして社会で活躍する、そのためのクリニックでありたい

と思っています。

 

そこで、一つの柱になるのは出産後の女性への支援

です。育児の不安に加え、自分の体調も心配になります。

劇的に体の状態が変わるわけですから、精神的にも

不安定になることも多いのです。

 

そこをサポートするわけですが、悩みはそれぞれですし、

解決策も個々人で違いますから、自分で解決する、

それをコンセプトにしています。そのための手がかりを

見つけてくれれば、と思っています。

 

まだまだ確立された分野ではありませんし、絶対的な

解答もないのでしょうけれど、一緒に考えている人が

いるということ、一人で悩む必要はない、ということを

伝えていけるといいですね。

 

エクササイズ、カウンセリング、あるいは遊びながら、、、

どんな形で実現できるか、じっくり検討中です。

 

検診

 

日本では世界の先進国と比べると検診の受診率が低いことが

知られています。

先日の新聞には”子宮頚がん”という言葉を知っているかどうか

という日本とアメリカとオーストラリアの比較が載っていました。

 

子宮がんといっても、子宮頚がんと子宮体がんがあって、とくに

子宮頚がんは検診も正確で簡単、早期に見つかることも多く

治る病気です。

 

アメリカとオーストラリアではほとんど全員がこれを理解し、検診の

受診率は60%程度。日本では60%くらいの人が理解をし、検診の

受診率は10%未満。

 

日本が圧倒的に低いのですが、アメリカやオーストラリアだって

理解しているっていっても検診に行くのは半分強なわけです。

やはり婦人科は受診しづらいというのは世界共通。

 

なかなか、行きづらいですよね。。。

 

乳がんなんかは、かかる人が多いせいもあって結構検診を受ける

ことがポピュラーになってきています。ピンクリボンとかいってちょっと

おしゃれな感じも出しつつ上手にキャンペーンをしています。

 

子宮、卵巣もがんばれ。

 

ところで、よく検診に来てくれる人からの一番困る質問。

「検診って、いつまで来たらいいんですか?

 もうだいぶ通ってますけど、いつも平気なんですが」

健康な人にするのが検診なんです。病院に来るのが面倒なのは

わかりますけど、検診とはそういうもので。。

いつまでも検診を受けてください。

 

といいつつ私は定期健康診断さえさぼろうと予定を入れたりして。

 

がん検診に限らず地域への医療に関する啓蒙活動は、私の目標の

ひとつで、みんなが自分の体の手入れができるようにいろんな情報を

伝えていければいいなと思っています。

 

医局の復権

 

産婦人科医が減ってきて、あちこちで産婦人科医を増やすための

会議やシンポジウムなどが開かれています。

来年の産婦人科学会でこのテーマを若手医師のみで扱うことに

なっています。

 

いろんな議論はありますけど、問題は30代で産婦人科医をやめる

人が続出したり、新人が増えないこと。ですので、20代、30代の

産婦人科医や研修医がどう思っているのかということがとても大事。

 

というわけでこれからを担う世代の目線での企画、となりました。

 

その中で医局の力をもう一度洗い直して強めていけばいいのでは

ないか、という議論があります。私も賛成。

 

医局についてはなかなか一般の人にはわかりづらいシステムで

不合理なこともたくさんあって、名義貸しなんて違法なこともあって

だんだん崩壊し始めています。(詳しくはまた別項で。)

以前はそれもしょうがないかな、と思っていました。

 

ただ、医局は医師の偏在をなくすには有効でした。ある一定期間で

いろんな地域に派遣してそれでバランスをとっていました。

ですが、派遣される病院によって待遇がまったく違ったり、教育

レベルに大きな差があったりして不満も出ていました。

 

そこで、

社会主義的ですが、10年目くらいまでの医師は医局の教育システム

から離れられないようなシステムを作ってしまうのです。専門医も

とれなければ、症例の集まる病院には医局経由でないと入れない、

そのかわり、自分の希望する研修内容を提出すればそこには10年の

うち必ず1~2年は行ける、そんなシステムです。

 

診療科にしろ研修病院にしろ人気があるのは、教育に力を入れている

ところが多いのです。時間があって金も稼げる、みたいな診療科も

人気ですが、そんなことで人を集めても仕方ありません。レベルが

下がります。

 

産科医療が崩壊しかかっている今、個々人がわがままを言わず、

こういう教育システムを維持していく必要があるんではないかと

思っています。

 

医療連携

 

そろそろオープンのお知らせが広まり始めるので、

その前に近隣の病院にあいさつ回りに行ってきました。

 

産婦人科の先生たち、医療連携室の人たちにそれぞれ

の病院で会ってもらいました。どこがどうとは言いづらい

ですが、病院によってずいぶん熱の入れ方が違うな、

と感じました。

 

地域のために、という思いか、もう目いっぱいの患者さん

が来て自分のところでは対応しきれなくなっているから

なのか、一生懸命地域連携について説明してくれて

お互いにがんばりましょう、といってくれるところもあれば、

逆に、あ、そうですか、くらいのところもありました。

 

振り返って自分はどうだったか、と思ってしまいました。

近隣のクリニックには患者さんを紹介してもらいたいので

大切にしていたつもりでしたが、積極的に仲良くしよう

という感じではありませんでした。

 

立場が違うので、思いが違うのは当然ですが、産婦人科

施設が減る中、今まで以上に連携が大切になることは

間違いありません。

 

地域のみなさま、よろしくお願いします!

 

産婦人科の未来は、

 

週末の当直も終盤を迎え、明けの月曜からの日常勤務に

備え眠りについたころ、呼び出し電話が鳴りました。

 

うーん、眠い!

性器出血があって、お腹痛くて、、、ふんふん、婦人科系

だから診察しましょう、と奮い立って救急外来へ。

 

すると、うずくまったまま動けない女性。受け答えもはっきり

しません。幸い血液検査と点滴は看護師さんがしてくれて

います。

 

さて、婦人科の診察をしたいのですが内診台までとても

自力では歩けません。看護師さんと二人でえいやっと

乗せると、なんと、突然全身を震わせ目の焦点は定まらず

ばたばたし始めました。と同時に嘔吐。

ふえぇ~~~。

 

1分ほどで落ち着き、意識を取り戻しましたがとても内診は

ムリ。ではストレッチャーに移しましょう、ということでまた

えいやっと乗せると、今度は大丈夫。

 

いやな予感とともに超音波をお腹にあてると、お腹の中は

液体で充満!

性器出血もあるとすると、、、

 

ワタシ「妊娠反応見て、すぐにオペっ!」

本人、両親に説明、手術室に連絡、手術を一緒にする

レジデントを呼び出し、妊娠反応の結果を見ると案の定

陽性。

 

子宮外妊娠の破裂、それによるショックです。

 

やる気に満ち満ちたレジデントが駆けつけてきました。

手術をすると決めてから約10分、患者さんはもう手術台の

上です。

 

手際のすぐれた救急外来、手術室のスタッフ、麻酔科の

医師、みなさんのおかげでした。

 

お腹をあけると、血液が噴き出してきました。合計1.7リットル。

体内の約40%程度の血液が一瞬にして失われています。

でも女性は強い、血圧は低めながら安定しています。

 

すぐに出血部位を確認し、切り取って止血を確認。

なんとか輸血をしないで乗り切れそうです。

 

こんなのを専門用語で、”ど緊急”、と呼びます。ど緊急が

産婦人科の醍醐味。産科でも婦人科でも起こりえます。

 

ひと仕事をやり終え、達成感に浸りつつ

ワタシ「産婦人科、なかなかやりがいあるでしょ?」

レジデント「そうですね、驚きました。

       でも、ぼくはやっぱり小児科希望ですね」

ワタシ「あ。。。そう。。。」

 

でもできる限り産婦人科の魅力を伝えていくつもり。

へこたれませんよ。

 

私も一言

 

福島県の病院で産婦人科医が逮捕された事件の判決が

出ました。

きっと、医療に携わる人のブログの大半はこの話題かとも

思われます。変わり映えしない内容ですみませんが、一応

ひとこと。

 

この事件も含めて医療裁判の多くは、患者さんの立場と

医療側の立場が違う、という前提が理解されていないこと

だと感じています。裁判だけでなく、日常のトラブルや

それに起因する医療不信なんかもほとんどそうでしょう。

 

とくに今回の事件は、もちろん結果を見ればとても残念ですし、

遺族にとってみればやりきれないものです。しかし、その

やりきれなさ、怒りが医療側に向かっては医療をやるものに

とっては辛いことです。

 

あまり詳しくは書けませんが、医療は100%ではないのです。

100%でなければ困るのですが、それを要求したらみな医師を

やめるしかありません。

 

今回の件で第三者機関を作って真相究明を図る、という動きが

加速されるようです。それはとてもいいことですし期待しています。

 

それと同時に私を含め、第一線で患者さんと向き合うものには

もっともっとコミュニケーションの能力を磨く必要があると感じて

います。

 

CAD

 

今日はちょっとした勉強会に行ってきました。

話題のひとつに、CADがありました。

CAD、シーエーディー、キャド、とも読むそうです。

正式名称はComputer Aided Diagnosis

 

コンピュータによる診断支援、ということですが、

実はもう商用化されているんだそうです。

心電図の自動解析はもうどこでもやっていますが、

それみたいなもので、画像を自動解析してしまおう

というものです。

 

アメリカでは乳がん診断のマンモグラフィで最初に

商用化され、日本では脳のMRIとか乳房は超音波

画像を自動解析する機械を作っています。

 

類似の装置としてはデジカメの人認証とか笑顔認証

なんかの技術がそれなんだそうで、なるほどと思い

ました。

 

まだあくまでAidedっていうことで、補助段階ですが、

いずれ人間の目でも見つけられないようなものでも

機械が見つけちゃうんじゃないか、なんて想像して

しまいました。

 

もうひとつ驚いたのはそれを日本で先頭に立って

推進している人が岐阜大学の先生、ということ。

日本各地で先端技術の開発がされているんですね。

 

ブルーの発光ダイオードは四国でしたし、日本は東京

一極集中とかいってもどこも元気だなあと頼もしく思い

ました。

 

News ZERO

 

News ZEROで「産科崩壊」、と題して特集をやっています。

いままでは患者側の目線で、医療の怠慢を斬る、みたいな

スタンスの報道が多かったですが、こういう医療側の目線を

取り入れた番組が出てくるのは公平になってきたな、と

思っています。

 

それだけ、産科医療が崩壊しつつある、ということもあるで

しょうし、医師患者関係が対等になりつつある、ということも

理由のひとつかもしれません。

 

世田谷ですら、産みたいと思う場所で産めないのです。

選択の余地があるからまだいいのでしょうが、医師人口の

多い23区ないですらそういう状況です。

 

現在勤務中の病院も、とっとと分娩を再開してほしいの

ですが、助産師が集まらないとかいってなかなかはじめようと

しません。ま、それはいいとして。。。

 

医療側の意識と患者さん側の意識の違い、これはなかなか

埋まらないのでしょうけど、産科が一番顕著だからまず産科

から崩壊してきているんでしょうね。いずれ全科に波及して

いく方向なんでしょう。

 

昔はもっと事故が多かったはずなのに、こんなに騒がれて

いなかった。患者さんが泣き寝入りしていただけ、なんでしょう

けど、きちんと説明する時間をとったりするには圧倒的に

マンパワーが足りない。そこのシステムの整備も進んで

いません。

 

 

最前線の医師は、とにかく一生懸命診療して、きちんと説明して

ってことをやるしかありません。少なくとも私は産婦人科医療に

夢も希望も持っていますから、そういうものも伝えられるといいなと

思っています。