カテゴリー別アーカイブ: 医療

安全な産婦人科医療のために

 

今日は日本産婦人科学会の企画委員会がありました。

卒業後10年以内の若手医師を中心に今後の産婦人科

のあり方について、学会で企画を催すための委員会です。

 

産婦人科医は、減少の一途をたどっておりその歯止めと

なるべくいろんな企画が催されています。

 

現在は、医師数が減って、現役医師の負担が増え、

それに耐えかねてまたやめる、という悪循環に陥って

います。それに加え学生が新しく産婦人科を専攻しない

のです。

 

少子化が進む中、産婦人科に明るい未来がないと

感じるのか、産婦人科医の中で議論していても答えは

でません。なぜなら、産婦人科医は少なくとも魅力を

感じて産婦人科を専攻したのだから、魅力を感じない

のはなぜ?と言われても答えられません。

 

でもこのまま放置すると、必ず患者さんの不利益に

つながってしまいます。すでに首都圏以外では、

産婦人科診療を受けるために1時間も2時間もかけて

病院に通院している人がたくさんいます。

 

なんとかいい知恵を出したいと思っています。

このブログも、もし医学生が目を通して、少しでも

産婦人科医療っておもしろい、と思ってもらえれば

という気持ちも込めて書いています。

 

少しでも伝わって!!

 

サイダツ 2

 

(ふぉぉぉーーーっ!)

ワタシ 「っっっっっっっ」

助産師さん 「ひぇっっ」

 

全身からアドレナリン噴出、汗も噴出、尿道はなんとか閉め、

ワタシ 「吸引っ!」

すぐに吸引分娩用のカップを出してもらい、臍帯を押しやって

赤ちゃんの頭に装着、そこはさすがに経産婦さん、吸引分娩で

あっという間に生まれました。その間30秒、しかし、心音が

低下し始めた時から数えると約7分、臍帯が圧迫されていたの

かもしれません。

 

すぐに、ややぐったりした赤ちゃんを蘇生です。胎便という

赤ちゃんの便を吸っていたのですぐに吸引し、酸素をバッグで

送り込みます。すると30秒ほどで元気な泣き声をあげ、

白かった赤ちゃんも本来の赤みを取り戻してきました。

 

念のため赤ちゃんを保育器に入れ、モニタリング。少し酸素を

加えると落ち着いていました。

 

子宮の中はブラックボックス、とはよく言ったもので、何が

起こるかわかりません。何が起こってもよいように、準備が

大事だとあらためて思いました。物品の準備はもちろん、

心の準備も必要です。

 

産婦さんにはその場でゆっくりと説明できないときもありますが

あとからちゃんと説明しています。そういう緊急事態もお産には

つきものである、と少し心構えをしてもらえるよう、母親学級など

で伝えていければいいなと思っています。

 

サイダツ 1

 

梅雨の中休み、やはり今年も暑い夏になるそうです。

熊谷では昨年40度越えの反省を生かし、50度までの

温度計を作ったそうです。。。

 

ところで、表題のサイダツ、SAIDATSU、臍脱、、臍帯脱出

の略です。赤ちゃんが生まれる時、体が全部出る前に

へその緒が出てくることのことです。へその緒が先に出て

しまうと赤ちゃんの体や頭と産道の間で圧迫されて、赤ちゃん

に血液が届かなくなりとても危険な状態です。骨盤位、

つまり逆子の時に起こりやすく、逆子が帝王切開になる

理由の一つになっています。

 

 

先日、あるお産のとき、子宮口が5cmくらい開いたところから、

ときどき赤ちゃんの心音が低下していました。ただ、すぐに

回復するし、回復したときはとても元気そうなモニター状況で、

かつ経産婦さん、陣痛もよく来ていたので様子を見ていました。

 

その後、心音はときどき低下するものの、臍帯がらみのものでは

ないか、というパターンで臍帯が首に巻きついているのだろうと

思っていました。診察すると、胎胞といって赤ちゃんを包んでいる

膜がパンパンに張っていて頭さえ触れず、どんどん進みそうな

感じです。

 

30分後、

助産師さん 「心音が落ちてまーす、分娩室でーす!」

ワタシ 「はいはーい」

それまでは陣痛室という準備室にいたので、分娩室ということは

お産になる直前です。やや安心しながら分娩室に駆け込むと、

心音が確かに下がって3分くらい戻っていません。診察すると

もう胎胞が膣からはみ出すほどに進んでいたので、

(もうお産だな)

ワタシ 「では破膜しまーす」

赤ちゃんを包んでいる膜を破ってお産にしようと思いました。

 

えいっと膜を破って、また内診。

(んん??んんん???)

なんだか赤ちゃんの頭の前にコリコリしたものが触れます。

(便秘かな?)

ときどき膣越しに便をコリコリ触れることがあるのでそうも

思いましたが、そのコリコリがつかめるのです。

ちょいと引っ張ってみると膣の中から出てきたものは

SAITAI、さいたい、臍帯!!!

 

母乳育児学習会

 

この週末は、松本で母乳育児学習会に参加してきました。

松本におそらく助産師さんを中心に小児科医、産科医が

約1000人集まって母乳育児に対する勉強をしました。

 

080628_0952~01.JPGのサムネール画像

 

 

 

 

 

 

母乳は粉ミルクに比べ利点がたくさんある、という主旨で

感染予防、母子の愛着形成、というのが根拠だということ

でした。

 

これは今のおばあちゃん世代がこどもを産んだとき、結構

粉ミルクが流行ったのをいまだに引きずっているところが

多いらしいのです。

 

私が学生の頃にはもう母乳の利点が言われていました

から、勉強会の内容は自然に受け入れられるものでした。

ちょっと難を言えば、母乳にこだわりすぎて粉ミルクは

絶対禁止、みたいに聞こえるところもあったところでしょうか。

 

母乳で育てたいのはやまやまだけど、仕事があったり、

母乳が出なかったりする人もなかにはいるのだから、

まあできれば、くらいのスタンスのほうがいいのでは

ないか、と思いました。

 

WHO(世界保健機構)はさかんに推奨しているようですが、

発展途上国で粉ミルクが清潔に作れないような場所を

想定して、それなら絶対母乳がいい、という意見はわかり

ます。いまの日本ではちょっと状況が違うかな、という気が

しました。

 

 

ところで、松本に行ったついでに諏訪によって古い友人

をたずねました。諏訪、ということで何かと話題の

諏訪マタニティクリニックを見物してきました。

 

080628_1838~01.JPG

 

 

 

 

 

 

思ったよりハイカラ。いつも畳の部屋で正座して

記者会見しているものだから。。。

地域医療連携

080608_0833~01.JPGのサムネール画像のサムネール画像

 

ここのところ、こんな話ばっかりです。

産科医療再編成に向けて、ほぼ連日いろんな

ところで会合が開かれています。

 

今日は、世田谷、目黒、渋谷地域の連携についての会がありました。

この地域の無床診療所ってものすごい数あるんですね。ひと地域

20個以上はあるんじゃないでしょうか。人口もとんでもないから、

それでもどこもそれなりに忙しいそうです。

 

調布は市内に全部合わせても10個以内、分娩取扱いはごく少数も

含めても3つ程度です。

 

ちょっと状況は違いますが、方針としては大体固まってきているようです。

各病院、診療所で見ている妊婦さんが診療時間外に受診したい場合、

当番を決めておく、ということだそうです。まずそこで判断して、必要なら

病院に搬送するという手続きをとるそうです。

 

そうすると月に2回程度当番をこなせばいい、ということだそうです。

で、そのために共通のカルテを作って妊婦さんに持っていてもらう

ようにするそうです。

 

でも、産婦人科って文字通り産科も婦人科もあるから、当番から

はずれても完全に拘束されない、ということではないですよね。

婦人科の患者さんに対しては当番制はとらないわけですから。

 

多少なりとも負担が減れば、というところからのスタートでしょうか。

ここに至っては、まずはスタートすることが大事、ですね。やって

みないといい点悪い点、わかりませんもんね。

 

早ければ来年にはスタートしたい、ということです。

「産科医療崩壊の」解決への一歩になることを願って。。。

 

ピルが安くなる?

080608_0833~01.JPGのサムネール画像のサムネール画像

来週はずっと雨、むしむししますね。

 

先日低用量ピルが保険収載されました。

子宮内膜症の病名で保険がきくように

なったのです。

もともと低用量ピルは避妊薬なので保険適用されていません

でした。ただ、現場では避妊のためと同じくらい生理痛とか

生理不順のために使われています。

 

それだけ効果があるということが実証されているのに、自費に

なって患者さんの負担が高い、というのは問題でした。それが

ようやく保険適用になって解消される、と思いきや。。。

 

なんと薬価がバカ高く332円、ということは3割負担で110円、

21日間飲むからそれだけで2310円、自費扱いの時とほとんど

変わりません。薬局によっては自費のほうが安いかもしれません。

 

こんなことになってしまったのは、製薬会社の思惑が働いたとか

働かないとか。働いたに決まってますけど。。。

 

保険適用で医療の正当性が保障されるからいいではないか、

ということらしいですけど、誰のための医療かって話ですよね。

 

あたる、あたらない

 

巨人がサヨナラ勝ちですね。うれし~。

っていうと、アンチ巨人ファンが怒っちゃいそうですが、

金子レディースクリニックはどこのファンでも大歓迎ですよ。

もちろんバレーボールを見ていた人も大歓迎。

 

今日はにおわない病院で当直です。

 

医療関係では、当直する人によってあたる、あたらない、

というのがあります。雨男、晴れ男みたいなもんで、

なんとなくその人が当直すると救急患者が多い、っていう

ことです。

 

けっこうみんなこういうこと言うのが好きなんですけど、

個人的には反対です。私なんか、どんどん来てほしい

と思っているので、いくら救急が来たってあたっているとは

思いません。ほかの人に言わせると私はあたるってことに

なっていますが、それは私が救急依頼を断らないからです。

 

運があるかどうかっていうのもその人の捉えかたひとつです

もんね。それなら何があっても、より悪いことを想定して、

ラッキーだったと思うほうが幸せってもんですね。

 

今日もたくさんの患者さんが来ますように。。。

なんか、不謹慎ですね、これは。

病院の場合、病院の仕事が増えるってことは苦しむ人が増える

ってことだから、なんかビミョーです。

 

 

顔の見える医療

 

最近は電子カルテの導入で、医師がパソコン画面ばっかり

見ながら診察をし、患者さんの顔を見ない、なんていう話も

あります。

 

パソコンに慣れた30代以下の以下の医師に、そんな人は

いませんが、やはり50代、60代では苦労が多いようです。

 

顔を見ないといえば、医師同士も病院が違うと名前だけは

知っているけども。。。ということがほとんどです。近くの病院に

いても書類上の付き合いばかり。

 

ということで、昨日は世田谷・目黒の産婦人科医師の集まりに

行ってきました。病院、開業医を問わず20人くらい集まって

結局日ごろのグチを言い合うみたいな感じになってしまいましたが、

皆さんの顔が見えて安心、かつ心強く感じました。

 

おじいちゃんクラスの先生から研修医の先生まで来て、でも

産婦人科を盛り上げよう、という気持ちはみんな共通していて

いい気分で酔っ払いました。

 

調布でも早く仲間にとけこんでいきたいな、と思っています。

 

 

おかげで今日は声が出ない。。。

外来が心配。。。

百日咳

 

今朝の雨はすごかったですね。この時期に台風とはびっくりです。

タクシーを使ったのに待っている間だけで、ビニール傘は破壊され

足元はぐっしょり。。。

 

ところで、最近、大人の百日咳が増えているようです。

知人の同僚が百日咳になったと聞いて、そんなの大人がかかるんだ

と驚きましたが、今日、妊婦さんの百日咳疑いの患者さんがいました。

 

ふつうは大人は抵抗力が強いので重症になることはないのですが、

最近の菌は強いんでしょうか。ちなみに予防接種は10年もすると

効果はなくなるんだそうです。

 

妊娠中にかかってもどうということはありませんが、咳が続いて

低酸素の状態が長く続くと問題でしょうから、早めに治療するのが

いいです。

 

去年ははしかでしたし、なんだかおかしいですね。

 

今日の走行距離 0km  5月 計27km

結審

 

福島県大野病院の裁判が結審しました。

亡くなられた患者さんのご冥福をお祈りいたします。

 

事件については、詳細はいろんなところに書いてあり

かつ私も特別な情報は知らないので、ちょっと省略。

 

簡単には、癒着胎盤 → 帝王切開 → 胎盤剥離

→ 出血多量 → 母体死亡

ということだと理解しています。

検察の求刑は、禁固1年!

やはり厳しい…

逮捕したからにはこれくらいしないと検察のメンツも

たたないのでしょうか。

 

医療側は学会をあげて猛反発しています。こういう

医療事故、事件が起きた時、

「この医療・医者はひどい」、と思うときと

「これ、自分でも危ないな」、と思うときがあります。

この事件は完全に後者で、だからこそ学会も猛反発

しています。

 

同じ経験はもちろんありませんが、似たようなことは

あって、間一髪、ラッキーだった、ということで切り抜けて

きています。これは産科医療に携わる人ならみんな

そうで、「一歩間違えば…」、というのが今回の事件

だったように思います。

 

一歩も間違えてはいけないんですが、それが人為的な

ものとどうにも防げないものがあります。

妊娠子宮からの出血は、恐ろしいくらいに出ますし、

止まりません。だから出る前に何とかしないと、という

論理なんですが、それができれば苦労しませんし…

 

亡くなられた方、ご家族の悲しみはどうにも癒されません。

ただ、真相を知るには裁判に出るしかなかった、ということが

悲しいですし、もっと話し合う余地はなかったんでしょうか。

もっとも、これは刑事裁判なので、検察には医療の専門家

はいないのか、あるいは、外に出ていない重要な情報が

あるのか、よくわかりません。

 

なんかだらだらとキリがなくなってきました…

 

判決は8月20日。今後の産科医療のあり方にも影響する

判決になります。