産科立て直しに向けて 1

 

開業に向けての準備が忙しくなってきて、通常の診療を縮小しようと

思っているのですが、こういう時に限ってよその診療科からの依頼が

増えて、なかなか時間がとれません。

 

それはそうと、このところどの時間帯のニュースでも医師不足問題が

流れない日はありません。特に最近妊婦さんの事例が続いたので、

産婦人科がクローズアップされています。

 

この影響で周産期センターに妊婦さんが集まってきているようです。

急に具合が悪くなったとき、”たらい回し”にされるならはじめから

センター病院に行っておこう、ということのようです。

 

予想されたことではありますが、ますます悪い流れに入ってしまいます。

 

私の持論ですが、周産期センターを機能させるためには、その

センターはヒマでないといけないのです。普段はヒマでなければ、

いざという時に動けるはずもありません。

 

周産期センターであるはずなのに産科医が常にフルに働かなくては

いけないほど、普通の分娩を取り扱っているから、他の病院から

搬送を受けるべき時に受けられないのです。

 

もちろん新生児の問題もあってそれだけでは解決しない問題も

ありますが、少なくとも今回東京で続いた2件と奈良で起こった

脳出血の件は、赤ちゃんには問題なかったものです。

 

ですから、周産期センターには紹介でなければ受診できない

ようなシステムにするべきなのです。

地域の病院やクリニックで、これは手に負えない、という判断が

あってからようやく周産期センターに行く、そういう順序にしないと

ますますいざという時の”たらい回し”がひどくなるばかりです。

 

ただ、これには医療側にも大きな問題があるのです。

 

産科立て直しに向けて 1」への2件のフィードバック

  1. 金子先生。いつも楽しみに読ませていただいております。
    先生の医療に対する真摯な振る舞いには頭が下がります。
    私には到底まねできません。
    ところで
    先生のおっしゃることは最もです。
    周産期センターは本来暇でなくてはなりません。
    本来正常分娩は扱ってはいけないのです。
    そして緊急時は早急に受け入れなくてはならないのです。
    そのためには常にベッドが空いている状態でなくてはなりません。
    先生のおっしゃるように正常分娩は扱わず、紹介患者のみ。そして場合によっては患者の選定(risk評価をセンターで行い妊婦を振り分けること)をすることが理想です。
    多くの周産期センターは正常分娩を扱います。また大都市は施設数が多いために『うちがやらなくても他がやるだろう』という考えが根底にあると思います。ですから産科やNICU(新生児集中治療室)がいっぱいであれば、まず受けてくれません。自病院の患者を搬送することは避けたいですから。
    逆に地方は『うちがやらねばどこがやる』と言う考えですので、何が何でもがんばります。大都市圏は施設が多いことが裏目になっているわけです。地方でのたらい回しは聞いたことがありません。それはひとえに医療従事者のモチベーションだと思います。
    ちなみに私の働いているN県の総合周産期センターでは正常分娩は原則扱っておらず、胎児救急(早産児)、新生児救急(胎児異常など)を扱い、母体救急は大学病院に依頼しております。また、切迫早産についても妊娠週数が経過し前医でもフォローアップが可能になれば前医に引き取っていただいております。そのようにして常にベッドを空けておきます。県内の患者は絶対に自分の県内で決着つけます(胎児鏡などの特殊治療は除く)。ちなみに今年は約250km離れた神奈川県からの母体搬送を2回受けました。神奈川内は元より、東京、埼玉、千葉、静岡に断られたそうです。
    先生がおっしゃるようにハイリスク患者は周産期センター、ローリスクは一般産婦人科、が理想ではあります。
    しかしここにも問題があります。これでは周産期センターは病院運営が困難になります。採算をとることが困難なのです。結局、妊婦健診料、分娩費が病院にとって一番の収入になりますが、それを一般病院に譲り、一番の不採算部門である切迫早産患者の長期入院、新生児医療を扱うのですから。従って採算無視にしないと成立しないのです。周産期センターは一般的に自治体(もしくは国)が経営しています。最近は自治体や国も経営困難で不採算分野の切り捨てに走り、独立行政法人化(独行化)しています。一般的な独行化では成立しません。
    私たち周産期センターで働く人間はただでさえ非常に大きなriskを背負って医療を行っています。もし独行化した場合、我々の待遇が悪化される可能性があります。ただでさえ『なんとかしなくては』と言うモチベーションで家族に負担を強いて働いている私たちには耐えられない仕打ちです。
    周りの見えていない、どこかのアホ大臣の発言は到底容認できません。あのような認識の勉強不足な人間が大臣は元より国会議員を行っていると思うと絶望的になります。
    私はこの仕事に誇りを持っていますが、今の政治体制や世の中の評価をみると、新たな身の振り方を考えねばならないかと思います。
    長くなって申し訳ありません。これからも楽しみに読ませていただきます。

  2. tugさん、いや、きっとtug先生ですね、ありがとうございます。
    わたしよりずっと観察眼と問題意識の鋭いコメント、勉強になります。
    なぜ周産期センターが、正常分娩を扱うのか、パート2で論じようと思っていたところそれより前に指摘されてしまいました。そうなんですよね、不採算部門と収益部門でバランスが明らかに悪いので、ハイリスク妊婦、ハイリスク新生児の管理には保険点数を今の10倍くらいはあげて、正常分娩を扱うのが馬鹿らしいくらいの体制にしないと、成り立ちませんよね。
    二階さんの発言にはあきれてしまいますが、神奈川から250km?の地域を実際に守られている先生からの、「モチベーションが低い」との指摘にはわれわれ都内で働く医師はしっかり反省しなければなりません。
    先生のような人がバーンアウトしてしまっては、ますます産婦人科業界は斜陽です。がんばってください。なんとか政治に働き掛けるような運動を、われわれ医師もしていかなければならないのかもしれません。

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