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赤ちゃんの健康とお母さんの幸せ

 

昨日、毎月恒例の同窓会がありました。

24人のお母さんが参加してくださって、元気な笑顔と元気な

赤ちゃんを見せてくれました。元気をくれて本当にありがとう

ございます。

 

私が、この仕事をやっていてよかったと感じられる瞬間のひとつ

です。

 

その中で、お母さんの興味深いお話。

「入院中は母乳が出なくて本当につらかった。この病院を選んで

後悔もした。でもそのあとがんばって今は完全母乳でがんばって

いる、3人目にしてはじめてだった。」

 

と涙ながらに話してくれました。

 

聞きながら私も感情が高ぶりました。。

この問題はいつも気にしていることなんです。

今回は勇気を持って言ってくれましたが、きっとそう思っている

お母さんたちは結構多いはず。

 

母乳が赤ちゃんにいいのはわかっています。これはわかりすぎる

ほどにわかっています。

でも、母乳だけにこだわりすぎるとそれがつらいと感じるお母さんが

いて、お母さんがハッピーでなくなってしまう。

 

「完全母乳である必要はありません、赤ちゃんの健康のために少しでも

いいから母乳をあげてください、そのためにちょっと努力してください、

頑張ったということが赤ちゃんに伝わりますから」

 

そんなスタンスで取り組んでいるつもりです。

それでもお母さんたちには、完全母乳で頑張らなきゃ、っていう

プレッシャーを与えてしまっています。

 

だからといって、お母さんの快適さを優先しすぎると、出るはずの

母乳も出なくなってしまいます。それでは赤ちゃんがかわいそう。

 

お母さんのつらい様子を見ながら、まだ頑張りましょう、と言う

スタッフも、ミルクを足してあげたいな、なんて思いながら心を

鬼にして励ましています。

 

赤ちゃんの健康を大事にしつつ、お母さんがハッピーでいられるように、

まだまだ私どものゴールは遠いです。。

 

クローズアップ現代

 

昨日のクローズアップ現代で、妊娠中のエコーによる

診断の話題が出ていました。

 

突然赤ちゃんに異常があると言われたお母さんは、びっくりして

パニックに陥ります。そのケアが十分にできていないのでは

ないか、というお話。

 

解説をしていた先生の話では、エコー技術が格段に進歩して

いままではわからないでいたものがわかってしまうようになって、

そのときの対応にまだ全体でコンセンサスがないのが問題だ

とのことでした。

 

一部病院では、エコー検査をやるにあたって、異常がわかった

場合、知らせてほしいか知らせてほしくないかをあらかじめ

書面で聞いておくところもあるようです。

 

でも、うちのようなクリニックの場合、異常がわかって知らせない、

なんていうことはありえません。

だって、異常があるとわかっていて、小児科の医師などが万全の

体制で準備していたら助かるかもしれないものが、うちで産んだら

助からない、なんてことがあるわけです。

 

また、助からない異常が見つかった場合、中絶するかしないか

家族の判断に任せる、というのがいまの主流ですが、それが

「丸投げされた」

と言われていました。

 

コミュニケーションの問題だとは思いますが、異常がわかってから

中絶をするしないの判断をするまでの時間が圧倒的に足りない

わけです。

それにこういう問題は個人個人の価値観の問題なので、医療者側

から中絶すべきとかすべきでないとは言えないです。

 

患者側に情報が足りない、と言っていましたが医療者側にも情報は

ないのが現状です。エコーで診ただけでは、その子がどれくらい

生きられるのかなんてわかりません。

なので、最悪のケース、最良のケースを話してその間です、ということ

しかできないのです。

 

今、中絶が許される週数は21週6日まで。

これを延長するしかないんじゃないかと思いました。

それに、今は赤ちゃんの異常では中絶できないことになっています。

これも変えたほうがよいですよね、現状とあっていないんだから。

 

私なんかでも、もし自分のこどもに異常があったらどうするか、なんて

今の時点ではまったくわかりませんし、その時になったらきっと

パニックになるだろうな、と思います。

 

とーっても難しい問題だから取り上げたんでしょうけど、医療者側の

努力が足りないんじゃないか、という論調にはちょっと疑問でした。。

 

卵子提供

 

きっと何万人の人がブログでこの話題を書いているだろうな、

とは思いつつ、ちょっと感想です。

 

49歳の国会議員が他人の卵子で体外受精したものを自分の

子宮の中に入れて妊娠しました。出産するころには50歳になる

そうです。

 

原理としては代理母と同じであって、55歳とか60歳とかで出産

している人もいるのですから、特別に驚くことでもないのかも

しれません。

 

ですが、ワタシが直感、感じたのは「違和感」。

「本人が欲しいんだからいいんじゃない」という人もいるでしょうけど

なんか違う、と思いました。

現実には、こういう体外受精は日本では学会として禁止されていて

できないですし、金銭的にも大変なので、同じようにこどもが欲しいと

思ってもあきらめている夫婦というのはたくさんいるわけです。

 

そうした人たちと日々接する産婦人科医としては、早く法律を整備して

いいならいい、だめならだめ、白黒はっきりしてほしいと思っている

のです。そしてそれをすべきなのが国会議員やお役人。

 

芸能人とか一般人とかが問題提起のために違法行為すれすれで

こういうことをするのはそれはそれでいいのだと思いますが、法律を

整備すべき立場の人間がこれをやっちゃったらだめでしょう。

 

「法律違反さえしなければ何をやってもいい」とうそぶいていた

ホリエモンなんかを思い出しちゃいました。

 

海堂尊が今年3月に「マドンナ・ヴェルデ」っていう本を出してましたが

こういうテーマでした。いつもこの人はこういう画期的な出来事が

起こる直前に本を出すんですね、すごいタイミングで感心します。

 

母乳育児支援プロジェクト2

 

いつの間にかもう夏ですね。

お産一つ一つに一喜一憂しながらいると季節感なし、

曜日の感覚は外来診察の予定で何とか保っていますが。。

 

母乳支援プロジェクト第2弾です。

スタッフブログにもありますが、スタッフを母乳支援を強力に

進めているクリニックに派遣しました。

 

そこは浜松の石井第一産婦人科。

なんとスタッフは車で行ったようです、浜松まで。なんか楽しそう。。

 

そこはBFH(baby friendly hospital)=赤ちゃんにやさしい病院

という認定を受けているクリニックで、その認定を取るにはいろいろ

条件があるのですが、その中で完全母乳率は98%くらいとのこと。

 

「ミルクは薬」と考えて、母乳が出まいが赤ちゃんの体重が減ろうが

ミルクをあげるという発想がほとんどないとのこと。

 

細かい技術はいろいろあるんでしょうが、伝え聞いたところでワタシが

一番感じたのは気合!

 

スタッフの気合しだいでどうにでもなるんじゃないかと思いました。

うちのクリニックの完全母乳率はいま80%くらいです。

これも去年までは60%くらいでしたが、気合でここまできました。

さらにもう一段上げるためには、気合だけじゃだめだよなぁ、と思って

研修に行かせたのですが、やっぱり気合のようです。

 

なんていうといい加減のようですが、全然そんなことはないんです。

気合、いいかえれば熱意、情熱、、、

これに尽きますね。

 

ワタシの経腟分娩への気合を少しでも分ければ可能かな、、、

というわけで今度はワタシが石井先生とお話ししてくる機会を

作りました。第3弾へ続きます。

 

臍帯血バンク

 

マヒした指が回復しないうちにさらにもう1回、鉗子分娩になりました。。。

もう指がぐしゃってつぶれそうで、涙が出そうでした。

お母さんのほうがもっと痛いのでガマン、ガマン。

 

ところで、臍帯血バンクネットワークに加入することにしました。

http://www.j-cord.gr.jp/index.jsp

詳しくは↑ のページで確認できるのですが、へその緒の中に入って

いる血液をとって、白血病などの血液の病気の人に移植しよう、という

ものです。

 

通常、へその緒の中の血液=臍帯血(さいたいけつ)は捨ててしまい

ます。また、へその緒には神経もないので、針を刺して血液を抜いても

お母さんも赤ちゃんも痛くもかゆくもありません。

ですので、いっさいお母さんや赤ちゃんに負担をかけることはありません。

 

また、へその緒を記念にプレゼントしていますが、それは今までどおり

できますし、ご主人さんがへその緒を切りたい、といってもそれも可能

です。

 

ご協力をお願いしたいのは、書類の記入です。

なんせ、病気の人に移植するものですから、なにか間違いがあっては

いけない、ということで今までの病気とかご家族についてのことなどを

書いていただきます。もちろん大事な個人情報ですので漏れることは

ありません。

 

出産の喜びに加えて、人助けもできるという二重の喜びと感じて

いただければ、と思います。

 

わがクリニックの理念、第3条に

「社会に信頼される」

というものがあり、ようやく具体的に実践できる場が得られて

嬉しい限りです。できるだけ多くの人に参加してもらって、

長続きできるよう頑張っていきます!

 

母乳育児支援プロジェクト1

 

最近は寒さが戻ってきましたが、ところで春一番は

吹いたのかどうか、、忘れてしまいました。

昨日は春一番というより、北風がびゅんびゅんふいた

みたいで、駐輪場の自転車を何度も立て直すはめに、、、

 

うちのクリニックでは、なるべく母乳をあげましょう、という

ことではじめてきましたが、さらに本腰を入れることに

決めました。

 

母乳が赤ちゃんの栄養に何より優れている、というのは

いまのところ常識になりかかっていますが、出産直後から

なるべくミルクを足さないで母乳だけにするのは、なかなか

つらいもの。

出産で疲れて、入院中くらいは休んでもらいたい、という

思いと、いやいやお母さんになって最初の仕事は母乳を

あげることだから一生懸命頑張って育児に自信を持って

もらいたい、という思いで、ちょっと揺れていました。

 

ですが、苦労して母乳をあげて退院できたお母さんたちの

充実した顔を見るにつけ、これはわれわれも本気で取り組もう

ということになったわけです。

 

といっても、あまりに神経質になりすぎることはないんです。

ムリならミルクをあげればいいのです。ムリになるまで

がんばったということが愛情のしるしですから。

 

というわけで、より本格的な母乳育児を応援する様子を

不定期ながら書いていきたいと思います。

今回は導入ということで、このへんで。。

 

インフルエンザ狂想曲4

 

ついにインフルエンザワクチンが余り始めました。

わずか2カ月ほど前の熱狂はどこへやら、すっかり

落ち着いてしまいました。

 

ウチのクリニックでも今までに受け付けた予約分より

多く在庫がありますし、薬の卸しの方にはもっと在庫が

あるようで、

「もうちょっと要りませんか?、ちょっとだぶついちゃって」

なんて言われる始末。

 

このワクチン、返品はきかないのでまさに不良在庫です。

余った分はスタッフに2回、3回とうちまくりましょうか。。。

 

当初の懸念通り、危険をあおりすぎた舛添前大臣に全部

買ってほしい。

 

直接支払制度

 

掲示板にご質問があったので、こちらでお答えします。

ちょっと長いですし、興味のない人には面白くない話題です。

すみません。。

 

直接支払制度が厚生労働省の肝いりで今年の10月から

始まりました。

どういう制度かといいますと、、、

 

産婦さんと産科施設の間で契約書を交わして、従来なら

産婦さん本人またはご家族に支払われていた出産一時金を

直接産科施設に払ってもらうようにする、というものです。

その額は42万円ですので、うちの場合なら10万円を予約金で

いただいていますので、ほぼ精算なしで済みます。

 

産婦さんはお金を一時にたくさん用意しなくて済みますし、

産科施設は取りはぐれがない、ということで両方にとって

メリットがある、というのが厚生労働省のうたい文句です。

 

ところが、、、

実は産科施設にはメリットはほとんどありません。

どころかデメリットばかり。。

 

というのも、出産して出産費用を払わずに逃げてしまう人など

ほとんどいません。

 

従来、産婦さんが健康保険組合に請求して一時金をもらって

いましたが、その事務手続きを産科施設で代行しなければ

ならないので、その仕事量が膨大になります。この手数料を

3万円程度上乗せしてもいいことになっていますが、それは

産婦さんの負担になってしまいます。

 

しかも、この手続きは前もってできないため、出産してから

42万円が振り込まれるまで約2か月かかります。

つまり、2ヶ月間、出産費用の8割程度が未払いになってしまい

ます。

 

産科施設は、出産費用が収入のほとんどを占めますので、

収入が2ヶ月分、従来の30%程度になってしまいます。

それが2ヶ月後に返ってくるかというと、ずーっと2か月遅れに

なってしまいます。返ってくるのは出産の取扱いをやめたとき。

 

こういう制度を作り上げた人は、自分の給料が今後2か月

30%になることを考えて作ったのでしょうか?

想像力が全く足りないとしか思えません。そういう人が国の

形を作っているんです。。。

 

一方で、産婦さんにとってみれば、、

従来から、健康保険組合には貸付制度と言って書類を1枚

出せば、出産前でも出産一時金の8割程度を借りられる制度

があるんです。

ですので、本当に現金が足りない場合は、その制度を利用

すれば済む話なのです。

 

そして、これは自民党政権の時に、ちょー駆け足で作られた

制度ですので、民主党に代わってこの制度がいつまで続くのか

わかりません。

 

というわけで、この制度自体に反対してるので、ご理解いただけ

れば、と思っています。

 

インフルエンザ狂想曲3

 

インフルエンザについては相変わらずテレビで情報を得る

ワタシです。都も医師会も、産婦人科学会もなにも声明を

出す前にテレビで出るのだから呆れます。

 

昨日のテレビによれば妊婦さんの接種は1回、健常成人と

同じ扱いになりました。すでに東京や大阪では妊婦さんより

小児優先とのことで妊婦さんにとっておいた分を先にこども

さんに回すと決定した、との報道もありました。

 

後出しで言うのはずるいのはわかってますが、この題名の

通り、どうしてもワタシには妊婦さんが重症化する、っていう

イメージが湧きませんで、優先するのはいいけど危機感を

あおるのはやだなぁと思っていたわけです。

 

それが今になって健常成人と同じ扱いでは、妊婦さんは

たまったものではありません。あれだけあぶないあぶないと

言っておいてねぇ。。

 

産婦人科学会はそれでも妊娠中は後期により重症化

しやすいとの声明を出してますが、もはや意味不明です。

 

というわけで、当院通院中の妊婦さんでワクチンがまだ

間に合わないからと言って悲観することはありません。

最終的(っていつ?)には全員分うてることになってます。

 

 

一つだけ良かったことがあるとすれば、季節性のインフルエンザ

ワクチン接種を今まで毎年妊婦さんに勧めていましたが、

ほとんどスルーされていました。今年は結構みなさんうってます。

 

リスクが特別高いってわけじゃないけれど、うっておいた方が

いいっていうくらいですけどね。

これが来年も続けばいいですね。

 

インフルエンザ狂想曲2

 

いよいよワクチン接種が迫ってきました。

昨日、医師会で説明会が開かれ、一応出席。

 

調布にこんなにインフルエンザがらみの医者がいるのか

っていうくらいの大盛況で、むしむしして気持ち悪いほど

でした。

もちろん(?)ワタシが最年少。

なるべく出口に近いところを確保しました。

 

さて、本題の説明ですが、説明する側もよくわかってない

ようで、なんだかかわいそうな感じでした。

質問のほとんどに、

「今度聞いてきます」

ですって。

 

予定よりどんどん遅れているようで、妊婦さんへの実施も

11月中旬から下旬にずれこみそう、とのこと。

普通の高齢者に至っては1月、とか言ってました。もう

そのころにはひととおりみんなかかるんじゃないかって

気もしますけどね。。。

 

最後は、

「早くワクチンが来るって信じましょう!」

「おぉー!」

みたいな感じ。。。

 

信じるくらいしかできませんが。