カテゴリー別アーカイブ: 医療

子宮内膜症

 

冬の雨は冷たくてちょっと悲しい感じがします。

激しい雨で気分を盛り上げるために当直に向かう車では

大音量でCDをかけていました。

と思ってついてみると今日はひまそうです。

 

今日は病気の話。久し振り、というか初めてかもしれません。

子宮内膜症っていうのは宇多田ヒカルも苦しんだ病気で、

っていうかまだ治ってないと思いますけどね。

 

というのは生理が終わってしまうか、出産を契機に体のバランス

が変わるかしないと、状態はなかなか良くならない病気なのです。

 

子宮内膜症といっても子宮の病気ではありません。

子宮の内膜といって生理の時に流れる細胞が、卵巣とかお腹の

中にたまる病気です。原因はいくつか説があるものの不明。

ということで予防法もありません。女性ホルモンが悪さをする

ことは分かっていますが、女性ホルモンを止めてしまったらもとも

子もありません。

 

40代後半とかになればいいのですが、妊娠年齢で苦しむ人が

多いのでなかなか治療には難儀するのです。

 

一番つらいのは痛み。生理痛はもちろんのこと、ひどくなると

一年中痛いのです。これはつらい。

お腹の中に内膜の細胞がばらまかれると、癒着を起こして

腸やおなかの壁が子宮や卵巣とがっちりくっついてしまうのです。

 

これをはがしてしまえば少し楽になるので、手術をすることも

あります。手術のせいで癒着がひどくなることもあるので、腹腔鏡

という内視鏡手術をするのが原則です。

 

ただ、内視鏡手術も技術が必要。ワタシも怖い目にずいぶん

あいました。癒着をべりべりはがすために出血が止まりません。

なんとかこまめに止めて、あとは人間の止血力頼み。

ちゃんと止まるのを見るたびに、人間の力ってすごいなぁ、なんて

思います。

 

最近、飲み薬で、効果だけ見れば画期的な薬ができました。

効果はいいんですけど、副作用がね。。。不正出血がけっこう

続いてしまいます。

早くいい薬が開発されるといいのですが。。

 

そういえば手術は手術ロボットがいい感じとか。絶対血管を

傷つけないんですって。触ってみたいものです。

 

女医の壁

 

もう12月。2日になってから気づいたような次第で、さすがは

師走、みなさまお忙しいのでしょうけれど、ワタシも今年は

一番忙しいかも、です。

 

今日は久しぶりに女医の壁に当たりました。

いつも女性医師と二人で外来をやっているのですが、大体

初診は半分くらい。手術患者さんはすべて見るのでそれなり

に忙しいのですが、今日は初診のほとんどの人が女医希望

とのこと。すっかり楽させてもらっちゃいました。

 

最近は忙しいので助かったと心からほっとしましたが、いつも

は心中穏やかではありません。産婦人科なので女性に見て

もらいたい、と思うのもわかりますが、それを補うべく技術と知識

を磨いているのですから、ただの男、というわけではありません。

 

手術は男性医師に、と言われてしまう腕自慢の女医さんも

いるので一概に不利とは言えませんけれど、女医希望の風潮が

男子学生の産婦人科離れを加速させているのも間違いない

のです。

 

とは言ってみたものの、こんなことを言うようでは女心を理解する

のは程遠いかも。。。

 

産科立て直しに向けて 3

 

今日はトーヨーキッチンでキッチン選び。自宅用ですけどね。

ショールームに行くとオシャレなのがたくさん並んでてテンション

上がります。

 

さて、続きです。

個人開業医で医師一人当たり約400件の分娩を余裕をもって

こなすなら、それをサポートする体制が必要です。それはすなわち

助産師、看護師です。

 

助産師がたくさんいれば、正常のお産は全く任せて問題ないので

ずいぶんと楽になります。しかし、産婦人科医が不足している、

といわれる前から、業界では助産師が少ないのが問題でした。

 

それなのに助産師も増やそうとしません。助産師学校は看護師

免許を持っていないと入れないし、4年制の大学でも選抜された

人しか助産師コースに入れません。その倍率はかなり高いのです。

つまり、助産師になりたい人はたくさんいるのに、それを教育する

場がないので助産師が増えないのです。

 

そのために、5年ほど前までは個人開業医では看護師や准看護師

が分娩経過を見て医師に報告して、ということをやっていました。

経過を見ていく中には当然内診も含まれていました。内診とは子宮の

開き具合を見るもので、それによってお産がどれくらい進んでいるか、

今後どのように進むかの判断の材料になります。

 

それが平成16年に、厚生労働省から内診は助産業務に含まれるとの

通達が出されました。事実上、看護師は内診をしてはいけないとの

通達です。保健師助産師看護師法という法律では助産業務の定義が

曖昧なままなので、長年内診が助産業務かどうかはグレーゾーンの

まま運用されていました。

 

それを内診が助産業務であるとの通達を出し、そのうえ平成18年には

神奈川の産科病院で看護師が分娩経過を見ていた妊婦さんが、

出産後出血多量で亡くなった事例があり、出血多量と看護師の内診

は全く関係なかったにも関わらず、看護師の内診が問題であると大きく

取り上げられました。

 

その後はどこでも看護師が内診できずに分娩経過を見ることができず、

個人開業をやめる医師が増えました。

 

助産師を大幅に増やすような計画はなく、看護師に分娩経過を見ること

も許さない。これが産科を扱う医師に負担をますますかけています。

 

ワタシも体力的に問題のないうちは続けられますが、今の体制が今後も

続くとするとやめる時は2日連続で起きていられなくなったときでしょうか。

 

看護師には内診を認めないのに、助産師には会陰切開や縫合という

明らかな医療行為を認めようという動きもあるようです。意味がわかり

ません。

 

産婦人科医を増やすように努力するのは当然ですが、それはどうやっても

すぐには無理。でも今すぐにできることはたくさんあるのです。なぜそれが

実現しないのか、国が本当に産科医療のことを考えているとは思えません。

 

産科立て直しに向けて 2

 

ここでもともと書こうと思っていたことは、パート1に対する

tugさんのコメントに集約されているので省略。

 

ということでパート3に書こうと思っていたことを書きます。

それは手前みそですが、個人開業の重要性です。

 

資金的なことはクリアされたとして、つまり周産期センター

でハイリスクばかりを扱ったとしてでは普通の分娩はどう

するか。

 

現在、大雑把に見て分娩を扱っている医者が7000人くらい。

1年間の出産数が100万ちょっと。単純に割ると一人当たり

年間150件の分娩を担当する計算になります。

 

ところが、個人開業では一人当たり300から400件程度の

分娩を扱えます。

一般に7割程度の分娩がリスクの低い、いわゆる普通のお産

だとすれば、70万を350で割ると2000人でいいのです。

 

とすると、残りの5000人でハイリスクの30万を担当すれば、

十分に受け入れは可能。とすれば、一人当たり年間60件。

ハイリスクですので一つの分娩に二人ずつかかっても年間

120件。これなら、婦人科の手術をしていようとも、十分に

余裕をもって対応できます。

 

現在は診療所と病院とでは出産数はほぼ同数。これを7対3に

持っていけば産婦人科医の数が増えなくても十分に対応でき

ます。

 

そして、開業クリニックで医師一人が350件の分娩を扱うには

もうひとつ重要なファクターがあります。

 

それは、看護師の内診です。

 

勇気ある発言

 

二階経済産業大臣の発言です。

http://jp.youtube.com/watch?v=jgqbb0IM9SQ

 

「産婦人科”たらい回し”は医者のモラルが足りないから」

だそうです。

 

リアルタイムで見ていましたがちょっと衝撃でした。

 

結構反発ありそうですけど。

さっそく抗議声明を出した団体もあるそうです。

産婦人科業界こそ早く反応したほうがいいですよね。

 

産科立て直しに向けて 1

 

開業に向けての準備が忙しくなってきて、通常の診療を縮小しようと

思っているのですが、こういう時に限ってよその診療科からの依頼が

増えて、なかなか時間がとれません。

 

それはそうと、このところどの時間帯のニュースでも医師不足問題が

流れない日はありません。特に最近妊婦さんの事例が続いたので、

産婦人科がクローズアップされています。

 

この影響で周産期センターに妊婦さんが集まってきているようです。

急に具合が悪くなったとき、”たらい回し”にされるならはじめから

センター病院に行っておこう、ということのようです。

 

予想されたことではありますが、ますます悪い流れに入ってしまいます。

 

私の持論ですが、周産期センターを機能させるためには、その

センターはヒマでないといけないのです。普段はヒマでなければ、

いざという時に動けるはずもありません。

 

周産期センターであるはずなのに産科医が常にフルに働かなくては

いけないほど、普通の分娩を取り扱っているから、他の病院から

搬送を受けるべき時に受けられないのです。

 

もちろん新生児の問題もあってそれだけでは解決しない問題も

ありますが、少なくとも今回東京で続いた2件と奈良で起こった

脳出血の件は、赤ちゃんには問題なかったものです。

 

ですから、周産期センターには紹介でなければ受診できない

ようなシステムにするべきなのです。

地域の病院やクリニックで、これは手に負えない、という判断が

あってからようやく周産期センターに行く、そういう順序にしないと

ますますいざという時の”たらい回し”がひどくなるばかりです。

 

ただ、これには医療側にも大きな問題があるのです。

 

将来像

 

今日も産婦人科学会、若手企画の会合がありました。

ワタシのような年代が若手に入るのか中堅に入るのか

今日もちょっと揉めましたが、それは枝葉。

 

経歴10年くらいの産婦人科医が自分の将来像を描けて

いないことが意外と多いのです。それが若い産婦人科医が

増えない要因のような気がしてなりません。

 

我々の年代の医者が夢をはっきり描けなければ、それを

学生などに伝えることなどできません。

 

具体的には医師の進む道として、大学の教員、研究員、

市中病院の勤務医、それと開業医の3つに大きくは分けら

れます。

 

それぞれに役割があって、開業医を選んだ私も、実は

勤務医に未練がないわけでもありません。勤務医でないと

できないこともたくさんありますし、また教育に携わることにも

興味はあります。

 

でも、年代的にはそろそろ自分の進むべき道を選んでそれに

むかって準備をしなければなりません。私の場合は、地域

医療が大切である、患者さんと常に接していたい、という思い

が強かったので開業を選びましたが、なかなか決めかねている

同僚も多いわけです。

 

それぞれに夢があって決めかねているのならともかく、どれにも

夢を持てなくて決めかねているのが問題です。

 

夢の持てる業界にならないといけません。

学会の若手企画がそれを促していけるよう頑張っていきたいと

思っています。

 

医療はどこまでできるか

 

またもや妊婦さんの脳出血の話題がありました。

わが調布で起こったこと。それほど頻繁にあるわけではないはず

ですけど、都内で続いたのでちょっと心配。

ただ、相変わらず、病院の受け入れ拒否、ということばかりに焦点

が当てられているのは残念です。

 

そのことについては書きはじめるときりがないので、ちょっと話を

そらして。

 

患者さんと医療側でトラブルの原因になるのは、医療に対して意識

のずれがあることがほとんどです。今回の報道にもそのずれが大きく

感じられます。

 

ところで、

「自分はこんなに体の不都合を感じている、だから全部治してください」

と言ってこられる患者さんがいます。それほど多くはありませんけど、

医療はそんなに完璧ではありません。

というより体は結局自分の力で治るのであって、われわれ医師はその

お手伝いをするだけ。できることとできないことがあります。

 

でも、自分の状態がすぐにぴしっと治らない、とわかると急に不機嫌に

なってしまうのです。こちらの説明の仕方が悪いのかもしれませんが、

正確な診断をして、正確な情報を伝える、あるいは正確な診断はできない

と正直に伝える、それしかやりようがないのです。

 

ですが、それ以上のものを求めている人には不十分。

それで医療不信、といわれることもあり、こちらからすると認識の差、

以上のものではないのですが、残念です。

 

「そんなの、勘違いしている患者さんが悪い」

と割り切れる医師もいますが、私はどうしてもひっかかってしまいます。

そのギャップをどうしても埋めたいと思っています。ですので、患者さんと

向き合って話し合うために地域医療に向かっていきたい、と思うのです。

 

こうしたずれを解消できるのはいつの日かわかりませんが、少しでも

いい関係を持てるようになりたい、と願っています。それが医療者側の

やりがいでもあるのですから。

 

ずれ

 

掲示板を始めました。

なんかちょっと古い手法ですけど、質問を受けるには

一番都合がいいかな、と思いまして、とりあえずやって

みます。

 

よくある質問FAQ、なんていって作る手もありますけど

開院後もコミュニケーションの一つとして続けていきたい

という思いを込めて作りました。

 

 

昨日の続きですが、東京で妊婦さんが脳内出血で出産後

亡くなりました。昨日から今日にかけていろんなことを言って

いる人がいました。

ワタシもそのひとりですけど。。。

 

医療関係者でない人は、「満床」で受け入れ拒否とは

納得がいかないと思います。満床っていっても、診察室とか

どこかに寝かせればいいじゃないか、なんて言いますけど、

そういう意味ではないんです。

 

それ以上患者さんを引き受けても、絶対に事故が起きる、

というキャパを超えたものを満床、と呼んでいるのであって、

実際にベッドが空いているかどうかは問題ではありません。

 

きっと無理やり引き受けて、観察がおろそかになって事故が

起きたらそれはもっと非難されるはず。

 

「とくダネ」のコメンテーターが言っていましたが、周産期

センターを名乗る病院に研修医が一人で当直する、って

こと自体が問題です。それだけ人が足りません。

 

また、20年前ならきっとしょうがない、ってことで済まされて

いた問題だろうと思います。それがいいことではありません

けど、実際分娩にかかわるお母さんの死亡率や赤ちゃんの

死亡率はぐっと改善しているのに、あたかも問題が増えて

いるかのような報道です。

 

医療の進歩によって救える命が多くなったことが、逆に

救えない命にスポットが当たりやすくなって、医療者の首を

絞めているように感じられます。

 

こういう、医療者とそうでない人の意識、感覚のずれを少し

でもなくしていければ、と思います。それには日々のコミュニ

ケーションしかないんですが、混み合う外来ではそれもなか

なか。。。

 

子連れ飲み会

 

毎日毎日打ち合わせ。少しずつ内容が固まっていくと

気分がいいものです。

 

ところで近頃病院の歓送迎会などの行事に子連れで

参加しています。。。

ほんの3年前くらいまでは考えられないことでした。

 

よく病院の飲み会に子連れで参加しているのは大体

婦長さんとか主任さんとかベテランの看護師さん。

そんなのを見ながら、遊びの場でも子供の面倒を見て

大変だなぁ、なんて思っていました。

 

そんな自分が子連れで参加です。

コップを壊さないかとか、服をびちゃびちゃにしないか

とか、飲み会どころではありません。子供好きの看護師

さんが少し面倒を見てくれたりしますが。。。

 

早く成長してくれー。

 

普段は面倒を見てくれている妻とか自分の面倒を見て

くれた両親も大変だっただろうなぁ、なんて、今さらです。