医療: 2008年9月アーカイブ

 

産婦人科医が減ってきて、あちこちで産婦人科医を増やすための

会議やシンポジウムなどが開かれています。

来年の産婦人科学会でこのテーマを若手医師のみで扱うことに

なっています。

 

いろんな議論はありますけど、問題は30代で産婦人科医をやめる

人が続出したり、新人が増えないこと。ですので、20代、30代の

産婦人科医や研修医がどう思っているのかということがとても大事。

 

というわけでこれからを担う世代の目線での企画、となりました。

 

その中で医局の力をもう一度洗い直して強めていけばいいのでは

ないか、という議論があります。私も賛成。

 

医局についてはなかなか一般の人にはわかりづらいシステムで

不合理なこともたくさんあって、名義貸しなんて違法なこともあって

だんだん崩壊し始めています。(詳しくはまた別項で。)

以前はそれもしょうがないかな、と思っていました。

 

ただ、医局は医師の偏在をなくすには有効でした。ある一定期間で

いろんな地域に派遣してそれでバランスをとっていました。

ですが、派遣される病院によって待遇がまったく違ったり、教育

レベルに大きな差があったりして不満も出ていました。

 

そこで、

社会主義的ですが、10年目くらいまでの医師は医局の教育システム

から離れられないようなシステムを作ってしまうのです。専門医も

とれなければ、症例の集まる病院には医局経由でないと入れない、

そのかわり、自分の希望する研修内容を提出すればそこには10年の

うち必ず1~2年は行ける、そんなシステムです。

 

診療科にしろ研修病院にしろ人気があるのは、教育に力を入れている

ところが多いのです。時間があって金も稼げる、みたいな診療科も

人気ですが、そんなことで人を集めても仕方ありません。レベルが

下がります。

 

産科医療が崩壊しかかっている今、個々人がわがままを言わず、

こういう教育システムを維持していく必要があるんではないかと

思っています。

 

 

そろそろオープンのお知らせが広まり始めるので、

その前に近隣の病院にあいさつ回りに行ってきました。

 

産婦人科の先生たち、医療連携室の人たちにそれぞれ

の病院で会ってもらいました。どこがどうとは言いづらい

ですが、病院によってずいぶん熱の入れ方が違うな、

と感じました。

 

地域のために、という思いか、もう目いっぱいの患者さん

が来て自分のところでは対応しきれなくなっているから

なのか、一生懸命地域連携について説明してくれて

お互いにがんばりましょう、といってくれるところもあれば、

逆に、あ、そうですか、くらいのところもありました。

 

振り返って自分はどうだったか、と思ってしまいました。

近隣のクリニックには患者さんを紹介してもらいたいので

大切にしていたつもりでしたが、積極的に仲良くしよう

という感じではありませんでした。

 

立場が違うので、思いが違うのは当然ですが、産婦人科

施設が減る中、今まで以上に連携が大切になることは

間違いありません。

 

地域のみなさま、よろしくお願いします!

 

 

週末の当直も終盤を迎え、明けの月曜からの日常勤務に

備え眠りについたころ、呼び出し電話が鳴りました。

 

うーん、眠い!

性器出血があって、お腹痛くて、、、ふんふん、婦人科系

だから診察しましょう、と奮い立って救急外来へ。

 

すると、うずくまったまま動けない女性。受け答えもはっきり

しません。幸い血液検査と点滴は看護師さんがしてくれて

います。

 

さて、婦人科の診察をしたいのですが内診台までとても

自力では歩けません。看護師さんと二人でえいやっと

乗せると、なんと、突然全身を震わせ目の焦点は定まらず

ばたばたし始めました。と同時に嘔吐。

ふえぇ~~~。

 

1分ほどで落ち着き、意識を取り戻しましたがとても内診は

ムリ。ではストレッチャーに移しましょう、ということでまた

えいやっと乗せると、今度は大丈夫。

 

いやな予感とともに超音波をお腹にあてると、お腹の中は

液体で充満!

性器出血もあるとすると、、、

 

ワタシ「妊娠反応見て、すぐにオペっ!」

本人、両親に説明、手術室に連絡、手術を一緒にする

レジデントを呼び出し、妊娠反応の結果を見ると案の定

陽性。

 

子宮外妊娠の破裂、それによるショックです。

 

やる気に満ち満ちたレジデントが駆けつけてきました。

手術をすると決めてから約10分、患者さんはもう手術台の

上です。

 

手際のすぐれた救急外来、手術室のスタッフ、麻酔科の

医師、みなさんのおかげでした。

 

お腹をあけると、血液が噴き出してきました。合計1.7リットル。

体内の約40%程度の血液が一瞬にして失われています。

でも女性は強い、血圧は低めながら安定しています。

 

すぐに出血部位を確認し、切り取って止血を確認。

なんとか輸血をしないで乗り切れそうです。

 

こんなのを専門用語で、"ど緊急"、と呼びます。ど緊急が

産婦人科の醍醐味。産科でも婦人科でも起こりえます。

 

ひと仕事をやり終え、達成感に浸りつつ

ワタシ「産婦人科、なかなかやりがいあるでしょ?」

レジデント「そうですね、驚きました。

       でも、ぼくはやっぱり小児科希望ですね」

ワタシ「あ。。。そう。。。」

 

でもできる限り産婦人科の魅力を伝えていくつもり。

へこたれませんよ。

 

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