医療: 2008年12月アーカイブ

 

今日もいい天気でした。オンコールはありますが、家で過ごして

いますし、ちょっとした外出もできるので落ち着いた年末です。

 

さて続きです。

私は、経腟分娩至上主義ではありません。ですが帝王切開が

いいとも思えません。何もしなければ経腟分娩になるわけで、

でも医学の進歩があって帝王切開にするべき症例が増えて

きているのも真実です。

 

ですが、逆子なら必ず帝王切開とかいうのは産婦人科医の

怠慢、というか思考停止なんだと思っています。そこで考え

なければ産婦人科医の意味がありません。帝王切開など

100件もやれば一人でできるようになってしまいます。

 

ただ、やはり危険性が高いのは高いですし、そういうお産には

人手が必要になるので、クリニックで扱うとすると今までより

判断を厳しくしないといけないな、と感じています。

 

自分ではそう思っていますが、妊婦さんもそう思ってくれている

かどうか、それもいつも気になります。

帝王切開だろうが経腟分娩だろうが、妊婦さんと同じ方向を

向けたと感じるときはいいお産だと感じられますし、そうで

ないときはただの自己満足か、とがっかりしてしまいます。

 

クリニックでやることで、より密な関係を築いて妊婦さんと

同じ方向を向けるように頑張っていきたいと思っています。

 

 

久しぶりに医療についてのお話です。

妊婦さんから質問があったり説明会でもちょっと聞かれましたので

帝王切開に対する私の思いを少し。

前にもちょこちょこ書いてますけどね。。。

 

今の日本の帝王切開率は15%くらいです。早産とか高齢での合併症

のある妊娠なんかが増えているので、クリニックで扱うような分娩では

10%弱かな、という印象です。あくまで印象です。。

 

よく問題になるのは、逆子、前回帝王切開、双子です。

これ以外のものは帝王切開をすることにあまり議論はありません。

この3つはだんだん帝王切開されることが多くなってきています。

 

理由は、逆子の場合帝王切開のほうが普通分娩よりも赤ちゃんに

危険が及ぶ確率が低い、というアメリカでの論文が出たことです。

前回帝王切開についてもアメリカで帝王切開すべき、という論文が

出て、それが否定される論文が出たにもかかわらずその名残がある

ため、双子については、二番目の子が分娩時に逆子になることが

ときどきあるから、です。

 

あとは訴訟の問題です。

赤ちゃんに障害が残ろうが残るまいが、帝王切開していれば

全力を尽くしたとして医療側が負けることはあまりないのに、

普通分娩の場合、それに固執したからだ、と医療側が負ける

ケースが多いためです。

 

こうして、10%程度が帝王切開になっています。

でも、私はそれは本当に必要なものなのだろうか、という疑問を

いつも持っていますし、産科に携わるならそのことを常に考えて

いるべきだと思っています。

 

 

今日も忘年会。楽しい会も続いてくるとなかなか。。

 

ところで、説明会でも質問がありましたが、クリニックが一人の医師で

やることについてですが、メリットデメリット、いろいろあります。

 

まずはメリットですが、ずっと同じ人が診療をすることで、信頼関係が

うまれやすい。診療方針にブレが出ないし、スタッフ全体を通しても

意志の統一がしやすいです。

 

一方でデメリットは、風邪ひいたときとか体調不良の時はちょっと

大変かもしれません。そうならないように体調管理には今まで以上に

気をつけないといけません。

 

ちなみに私はいままで仕事を体調不良で休んだのは7年半で1日。

これくらいであれば急きょ、ピンチヒッターをお願いしても大丈夫かな

と思っています。

 

あとは緊急時の対応ですが、出産に関してはどんな緊急であろうと

医師の役割は一人で十分です。人数は多いほうがいいですが、

それは連絡役とか、物を運んだりとか医師である必要はないもの

ばかり。ですので看護師、助手などのスタッフを手厚くしておくこと

のほうが大事になります。

 

そういったことで、あえて数を多くして手広くやるよりも、医師が

ひとりで手厚く患者さんに向き合うことを選びました。

こうした方針に共感していただければ、とても快適なクリニックに

なるはずです。

 

 

冬の雨は冷たくてちょっと悲しい感じがします。

激しい雨で気分を盛り上げるために当直に向かう車では

大音量でCDをかけていました。

と思ってついてみると今日はひまそうです。

 

今日は病気の話。久し振り、というか初めてかもしれません。

子宮内膜症っていうのは宇多田ヒカルも苦しんだ病気で、

っていうかまだ治ってないと思いますけどね。

 

というのは生理が終わってしまうか、出産を契機に体のバランス

が変わるかしないと、状態はなかなか良くならない病気なのです。

 

子宮内膜症といっても子宮の病気ではありません。

子宮の内膜といって生理の時に流れる細胞が、卵巣とかお腹の

中にたまる病気です。原因はいくつか説があるものの不明。

ということで予防法もありません。女性ホルモンが悪さをする

ことは分かっていますが、女性ホルモンを止めてしまったらもとも

子もありません。

 

40代後半とかになればいいのですが、妊娠年齢で苦しむ人が

多いのでなかなか治療には難儀するのです。

 

一番つらいのは痛み。生理痛はもちろんのこと、ひどくなると

一年中痛いのです。これはつらい。

お腹の中に内膜の細胞がばらまかれると、癒着を起こして

腸やおなかの壁が子宮や卵巣とがっちりくっついてしまうのです。

 

これをはがしてしまえば少し楽になるので、手術をすることも

あります。手術のせいで癒着がひどくなることもあるので、腹腔鏡

という内視鏡手術をするのが原則です。

 

ただ、内視鏡手術も技術が必要。ワタシも怖い目にずいぶん

あいました。癒着をべりべりはがすために出血が止まりません。

なんとかこまめに止めて、あとは人間の止血力頼み。

ちゃんと止まるのを見るたびに、人間の力ってすごいなぁ、なんて

思います。

 

最近、飲み薬で、効果だけ見れば画期的な薬ができました。

効果はいいんですけど、副作用がね。。。不正出血がけっこう

続いてしまいます。

早くいい薬が開発されるといいのですが。。

 

そういえば手術は手術ロボットがいい感じとか。絶対血管を

傷つけないんですって。触ってみたいものです。

 

 

もう12月。2日になってから気づいたような次第で、さすがは

師走、みなさまお忙しいのでしょうけれど、ワタシも今年は

一番忙しいかも、です。

 

今日は久しぶりに女医の壁に当たりました。

いつも女性医師と二人で外来をやっているのですが、大体

初診は半分くらい。手術患者さんはすべて見るのでそれなり

に忙しいのですが、今日は初診のほとんどの人が女医希望

とのこと。すっかり楽させてもらっちゃいました。

 

最近は忙しいので助かったと心からほっとしましたが、いつも

は心中穏やかではありません。産婦人科なので女性に見て

もらいたい、と思うのもわかりますが、それを補うべく技術と知識

を磨いているのですから、ただの男、というわけではありません。

 

手術は男性医師に、と言われてしまう腕自慢の女医さんも

いるので一概に不利とは言えませんけれど、女医希望の風潮が

男子学生の産婦人科離れを加速させているのも間違いない

のです。

 

とは言ってみたものの、こんなことを言うようでは女心を理解する

のは程遠いかも。。。

 

カテゴリ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1

このアーカイブについて

このページには、2008年12月以降に書かれたブログ記事のうち医療カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは医療: 2008年11月です。

次のアーカイブは医療: 2009年1月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。